【あたしンち】藤野という男
こんにちは。4月頃からAmazon Primeであたしンちのアニメを狂ったように観続けている私です。
もともと実家に漫画がありそれを読んでいたのですが、それからしばらく経った今アニメを見返すと、覚えているエピソードや忘れていたエピソードが盛り沢山でとても楽しいのです。脳の奥底にある記憶を呼び覚ましてくれます。
そして何より、あたしンちはシンプルな魅力がいっぱいなんですよね。育児エッセイとは少し違った、日本の一般的な中流家庭の日常、そしてその家族を取り巻く環境を丁寧に、且つ共感を得ることができるように作られています。
さらに言えば、私の中であたしンちをあたしンちたらしめている要素は「要素ごとに描き分けられたキャラクター」にあると思います。似たような登場人物がいないのは当たり前ですが、性格だけでなく見た目も丁寧に作られているんです。シンプルで分かりやすい、これが一番ですね。
とりわけ私が好きなのは、立花家次男のユズヒコが通う中学校のクラスメイト、藤野です。
かわいい
ユズヒコの1番の友人でしょうか。いつも一緒にいるイメージです。
藤野は無邪気で明るく、あまり何も考えてない天然な感じのキャラです。
彼の出てくる素敵エピソードを探せば枚挙に暇がありませんが、私が特に好きな、藤野とユズヒコの関係性が分かる話、そして彼の家庭環境が描かれる話の2つを紹介したいと思います。
なんか突然あたしンちについて語りたくなったのです。
第57話「ユズ、男同士」
寝癖がうまく整わず、いつもの時間を過ぎて家を飛び出すユズヒコ。
1時間目の数学を担当する林先生は遅刻に厳しいので急ぐユズですが、歩道橋の階段を駆け上がっていると後ろから聞き覚えのある声が。
藤野だ!どうやら彼も遅刻しているよう。
2人は諦めて歩いて登校。廊下でふざけていると
数学の林先生に怒られてしまいます。
廊下に立っている2人。女子生徒に見られて恥ずかしがるユズヒコと、嬉しそうに小さく手を振る藤野。2人の対比が描かれています。
学生の頃の先生に怒られた経験って、そのときは辛いですが、あとから思い出すと面白かったりしますよね。
2人が空を見上げると
綺麗な空!怒られて廊下に立っている2人ですが、どことなく楽しそうな表情です。しかし…
藤野が急に鼻血を出してしまいます。
慌ててトイレからトイレットペーパーを持ってくるユズ。優しいですね。
応急処置。このあとはしゃいでまた林先生に怒られました。
次の時間は英語。鼻を摘んで上を向いている藤野を見つけた唐沢先生は
「学校で何興奮してんだ?」「何かいいもんでも見たか?」とイジります。
皆に笑われる藤野。
「そんなニキビ面で鼻血ブーなんて露骨だな」「鼻の下伸ばさずに成績伸ばせな」唐沢は立て続けに藤野をイジり倒します。
「保健室行ってもいいですか」と聞く藤野の表情は暗く、沈んでいます。
友人を笑い者にされたユズヒコは面白くありません。付き添いを申し出て教室を出た藤野のあとを追います。
廊下を歩いていると、教室から「なんだあいつら怪しいな」と唐沢の声。2人は無視して歩きます。
「あいつ、くだんねーな」ユズヒコは言います。
「ん」とだけ答える藤野。上を向いているのは鼻血が出ているからなのか、涙を堪えているからなのか。鼻を啜る音がします。
「あいつ、ほんとくだんねーよ!」再びユズヒコは言います。
暗い階段に光が差し込んでいます。
「ユズピ」藤野がユズヒコに声をかけます。ユズが反応すると…
藤野は鼻血をユズの鼻になすりつけるのでした。
もういつも通りの藤野のようです。
2人はまた登校中のようにふざけ合いながら階段を降り、保健室へ向かうのでした。
私があたしンちで一番好きなエピソードです。男同士の友情、藤野が珍しく見せる悲しい表情、何より、遅刻や授業中に静かな廊下を歩いたりする光景が、少し悪いことをしているような、そういう気持ちになったりしていた昔の自分の記憶を刺激するんですよね。
寂しげな藤野を思って彼についていくユズヒコの男らしさ、川島が惚れるのも分かります。
それにしても唐沢はひどいですね。人を馬鹿にして取る笑いはあまり好きではありません。ましてや教師が生徒にそれをするなんて言語道断です。先生に言われたひどい言葉なんて、生徒は一生忘れませんからね。
2人の友情がより一層強くなった、そんなエピソードでした。見るたび泣きそうになります。
もうひとつ
第334話「ユズ、藤野の家へ行くっ」
家でパンを食べていたら母に「これも食べちゃって」と煮物を出されたユズヒコ。食い合わせ悪すぎます。
その話を給食の時間に藤野とナスオに話すと大ウケ。
藤野は過去に立花家に行ったことがある(219話「藤野、遊びにくる」)ため、そこで見た立花家の面白エピソードを話し出し、ユズヒコを怒らせます。
放課後、ユズが1人で下校していたら藤野が来てお昼のことを謝罪。2人は一緒に下校します。
途中通ったコンビニで藤野がお弁当を買いたいと言い出します。
自分と弟たちの分3つのお弁当を買う藤野。
親が遅いんだな、とユズヒコは思います。
それならおまえんち行かせて、とユズは提案し、藤野の家に行くことになりました。
暗くなってきましたね。
藤野の家だと言う4階の奥の家は真っ暗。弟がいるはずなのに。
「ただ〜いま」藤野は真っ暗な部屋に言います。
「なんだ、誰もいねーじゃん」とユズヒコは言いますが…
暗い部屋の奥に弟が1人ポツンといました。
電気をつけるとビックリ。部屋がとても散らかっています。
ユズもビックリ。
上の弟は塾に行っているようで家にはいません。
いつもコンビニ弁当を食べているわけではなく、普段は母親が朝作り置きをしてくれているよう。今日はたまたまだと藤野は言います。
部屋はとても寒いです。藤野がストーブを点けます。「あいつらにはストーブいじるなっていつも言ってんだ。危ねえから」藤野は言います。
「みかん食うか?」と藤野が言い、段ボール箱から取り出したみかんは…
カビが生えていました。
「ちぇ、はずれか〜」と言うともう一度箱からみかんを取り出します。今度は普通のみかんでした。
「すげえな、おまえんち」ユズは言います。「なんかスゲー!て感じだよ」
「ユズピんちには負けるぜ、全然敵わねえよ」と藤野に言い返されます。
「嬉しくねえ……てかうちってそんなにおかしいのか!?」ユズヒコは叫びます。
友達の家ってなんか変な感じしますよね。自分の家と明らかに違うんですから。
ユズが藤野の家に行ったときは藤野と下の弟しか居らず、両親の姿を見ることはできませんでした。
弟が1人のときは電気が消えており、部屋は散らかっている。家も狭いのでしょうか、リビングに2つの勉強机があります。藤野と上の弟のものなのでしょう。彼らには自分の部屋というものがありません。
なんだか怪しい匂いがしてしまいます。親はちゃんと育児を行なっているのでしょうか。しかし、いつもは母がご飯を作ってくれてる、上の弟が塾に通っている、という点からその疑問は解消されます。ネグレクトではないのでしょう。
そうなると、汚い部屋は母親が片付けが苦手であり、電気が消えていたのは単なる節電であると予想できます。あまり裕福な家庭ではないのでしょう。立花家の母は「うちはビンボーだから」と繰り返し叫びますが、恐らくそれより貧しい家庭なのでしょう。
普段我々が見ているのは立花家を舞台とした「あたしンち」ですが、藤野にも当然「あたしンち」があり、そこで日常が繰り広げられているのです。部屋の汚さも寒い部屋も藤野にとっては日常で、ユズヒコを家に上げる際もそれを気にする素振りは見せません。
この家庭で藤野は真っ当に成長していますが、もしこの家の子どもがユズやみかんだったらどうなっていたでしょう。これは完全な邪推ですが、藤野が腐った「みかん」を取り出す場面で、何か暗喩めいたものすら感じ取ってしまいます。
それぞれの家庭にそれぞれ暮らしており、それぞれが成長していきます。
ユズヒコは純粋に、友人の家であること、家に帰っても親がいないこと(立花家の母は専業主婦)などから「なんかすげー」と言っているようですが、これが高校生、はたまた大学生のユズヒコだったら、藤野の家に対する感想もまた変わってくるのでしょうか。
人の家庭の事情とは難しいものです。親友や恋人でさえも踏み入ることのできない領域でさえあります。藤野家に確かにある日常を知ることはできません。どの家が良い、悪いかなんて簡単に言うことはできないのです。
この2つのエピソードを見れば、藤野のことを少しだけ分かることができます。どちらも大好きなお話です。
私は藤野が大好きです。彼は無邪気で可愛く、中学生のあどけなさを存分に残しています。彼が今後も真っ当に成長していくことを祈るばかりです。
先日、一緒にDbDをやってくれている友人(通称デフレ)と一緒にあたしンちを見たら、川島のクリスマスの話で不覚にも泣いてしまいました。とても恥ずかしかったです
タイにもインドにも行ったことがない現役大学生が主観で選ぶandymori名曲ベスト10 後編
前回に続いております。
5. Life is Party(andymori収録)
絶妙にダッサイMVですね〜!!でもそれがいい!!
「ベンガルトラとウィスキー」にも出てきた「life is party」というフレーズがそのままタイトルになっています。
この「life is party」は小山田壮平の人生観と被るところがあるのでしょう。詰まるところ彼はほとんどの曲でこの「life is party」という考え、価値観を歌っているのです。
気楽に行こうぜ、みたいな。ダンスでもすべ、みたいな。その一方で暗いこともしょっちゅう歌うので、明暗のコントラストがより高くなっているような印象を受けます。
10年経ったら
おもちゃも漫画も捨ててしまうよ
Life is Party
気にしないでいいから
うーーーーん最高!トイストーリー3を思い出しますね。
楽園なんてないよ
楽園なんてあるわけない
友達も繰り返してる
Life is Party
うーーーーーーーーーん最高😭いつでもandymoriは私たちの味方です。
4.Weapons of mass destruction(革命収録)
動画はありません。
ゆったりとした曲でアルバムの中でもあまり目立たない印象ですが、特に強いメッセージが込められているように感じます。
andymoriに珍しい英文のタイトルは直訳すると「大量破壊兵器」ですね。一見戦争に対する歌のようですが、歌詞では直接的な言及は一切ありません。
東洋の紛争を歌っているのかも知れませんし、日常の些細な諍いや、或いは歌詞に出てくる「君」を大量破壊兵器に喩えているのかも知れません。難しいです。分かる人がいたら教えてください。
一人きり電車に揺られなんだかなって思って
映画のような我が世界を想えば
うまくいけばいいし
ダメなら悲劇のヒーローになるよ
居眠りしたり
ぼんやり車窓を眺めたりするよ
Cメロの歌詞です。その通り過ぎますね。誰だって自分が主人公の映画を生きているんです。どう捉えても良いんだな、と。
皆さんも電車に揺られながら、このようなことを考えた経験があるのではないでしょうか。ない人はこのようなブログを読まないタイプの人だと思うので皆あるはずです。電子メールでインターネット普及率のアンケートを取ったら利用率100%だったみたいな。
そういう日々の、ふとしたときに思って寂しくなってしまうような気持ちを歌っている素敵な曲です。
3. 君はダイヤモンドの輝き(光収録)
2本の安いリコーダー(決めつけ)から始まる曲です。このリコーダーの音が最初から最後まで聴こえるため、チープでありつつも淡く儚げな印象を受けます。
曲としてはあまり大きく動く部分もなくひたすら淡々としているのですが、それが逆にアクセントというか、落ち着いた気持ちで聴けるような仕掛けになっているのです。仕掛けって言うほどではないけど。切なくなります。
正直この曲が収録されているアルバムは全体で見たらあまり好きな方ではないのですが、間に挟まるこの曲はとても好きなのです。
穏やかな朝に 眠れない夜に
君のことを呼んでいるんだよ
ごめんね ありがとう
ごめんね ありがとう
素敵です。それにしてもこの曲は誰に対して、どういう心情で歌われているのでしょうか。小山田壮平の「愛してる」は異性対する愛情表現のみではありませんからね。
君はダイヤモンドの輝き
僕だけが愛した人
サビで繰り返されるこのフレーズ「僕だけが愛した人」というのが引っかかります。深いことを考えないなら単なるモテない人に対するラブソングですが、そんなはずはない、はずです。
まあ純粋なラブソングであると考えた方が手っ取り早いので私はそう思っています。愛する人がいて、また会うことはできるけど、なんだか先に進めない。だからこそ輝いて見える。的な。恋愛というのは難しいです。諦めに近い感情ですね。
2. スパイラル(宇宙の果てはこの目の前に収録)
はちゃめちゃに名曲です。恥ずかしながら私はこの曲のことをあまり知らず、サークルの先輩が好きと言っていたのを耳にして初めて聴きました。あまり目立たない曲ですが、大きく盛り上がるところやボーカルだけになるところ、小節に歌詞を詰め込むandymoriらしさ全開なところなどがありとても好きな曲です。
バレないように隠し持ってた
羽が指から落ちてった
クルクルと弧を描いて
スニーカーの上に落ちてった
と歌い出します。この「指から落ちてった。スニーカーの上に落ちてった。」のような、同じ言葉でまとめるフレーズが良いです。
あてのない旅
異国の街で一人きり迷子になったのならチャンス
誰でもない 誰でもない
自分だけのために歌うチャンス
2番サビの歌詞です。ここほんとに良い😭
一人ぼっちで誰も頼れる人がいないときこそ、自分と向き合う良い機会になり得るのでしょう。そのまんま捉えても良いです。
自分「だけ」のためのチャンスなんですよね。他は無視しましょう。
僕たちはそれでも明日を
夢見て眠るしかないんです
あの涙と この古傷と
風と共に舞いながら
僕たちは時間がない 時間がない
あの頃に戻りたいと言いながら
いつだってもう少し もう少し
君にいて欲しいだけ
良すぎる😭泣けてきます ここをアカペラで歌うセンスがすごい。鯔のつまり「泣くなよベイベー」ってことなんです。泣くなよベイベー
1.1984(ファンファーレと熱狂収録)
トランペットのファンファンがいい味だしてますね🎺
この曲は、もう、歴史に残る大名曲です。
誰がいつ聴いても百発百中でその人の原風景たるノスタルジックな景色を思い起こさせます。
私は割と本格的にバンドにハマると、そのバンドのマイナー目な曲ばかり好きになるタイプなのですが、この曲はApple Musicでandymoriのトップソングとして挙げられています。皆が良いと思っている曲を私も良いと思えていることが嬉しいです。
ファンファーレと熱狂
赤い太陽
5時のサイレン
6時の一番星
もうこれだけで全て伝わってしまいます。風景が見えます。公園でしょうか。夕焼け色に染まっていますね。そろそろ帰らないと親に叱られてしまいます。
こんなにシンプルなのに私の心の琴線に触れてくる曲は珍しいです。捻くれている私の、心の奥の柔らかいところに真っ直ぐ届いてしまいます。
この曲に関しては過去に記事にしているので、良かったらそっちも読んでみてください。ここではあまり多く語りません。
みたいな感じです。andymoriは、物事を複雑に考えすぎてしまうきらいのある私に、こんなんでいいんだよ、と投げやりな答えを示してくれたバンドです。「延々と」を「永遠と」と誤用してしまう人の多さに呆然としたりしていましたが、そんなことはどうでも良いのです。意味が伝わればいいじゃないか。間違ってたっていいじゃないか。そんな気持ちを持てるようになりました。ありがとうandymori
いややっぱ永遠とはキツイな
タイにもインドにも行ったことがない現役大学生が主観で選ぶandymori名曲ベスト10 前編
こんにちは。お元気ですか。私は元気になってきています。外出すればするほど身体が元気になっていくのを感じています。しかし現状まだ外出は控えた方がいい感じなので、必要最低限の外出で身体に安らぎを与えています。
andymoriというバンドはどうしても素敵です。前に何かしらの記事で書いたかどうか定かではありませんが、技術とかキモいコードとか、そういうところに囚われて偏った音楽ばかりに傾倒していた私の目を覚まさせてくれたバンドがandymoriなのです。「あ、これでいいんだ」と。
音楽はメロディ、歌詞は二の次的精神でいた私に良い歌詞の素晴らしさを教えてくれたのもandymoriでした。
洋楽ばかり聴いていた時期もありました(今でも好きです、普通に)が、やはり日本人に刺さるのはどうしても日本語の歌詞ですね。
そんな普通のandymoriファンが選ぶ名曲ベスト10です。ちなみにハマったのは全然2年前とかです。
今回はあまり語りすぎないようにします。キリがないので。
そしてあくまで主観の、自己満です。ブログというのはそういうものです。異論や反論は受け付けますが、共感はもっと受け付けます。
10.16(ファンファーレと熱狂収録)
素晴らしい曲です。andymoriの歌詞は素朴で内省的でありながら、そこから一歩踏み出て開けた場所にもいるような印象を受けるものが多い気がします。かといって独り善がりになっているわけでもなく、そこにフロントマン小山田壮平の人生がうまく表されているのですよね。センスというやつです。
「16」は日々の空虚を感じさせます。なんとなく、惰性で生きてるけど、それを省みて後悔しているわけでもない。まあずっとこんな感じなんだろうな、という心算が見えますね。余程アクティブな人でもない限り、誰しもが感じる気持ちなのではないでしょうか。
16のリズムで空を行く
昔の誰かに電話して
貰った花をまた枯らしながら
今度呑もうねと嘘をつくのさ
二番のサビで歌われるこの部分が大好きです。何度この嘘をついてきたことか。
9.teen's(宇宙の果てはこの目の前に収録)
タイトルからも分かる通り、10代のことを歌っています。それも青春なんかの爽やかさではなく、自分のちっぽけさに鬱屈としているような、何もできない自分が嫌になったときのような、そういうネガティブな気持ちを歌っています。
これは完全な偏見なので話半分で聞いて欲しいのですが、andymoriが好きで聴いている人は割と内向的というか、あまり目立つような青春時代を送ってこなかった人たちであるような気がします。というかこれはもう正解です。華やかな人は見たことがありません。周りのandymoriリスナーを見てそう感じ、去年行った小山田壮平のツアーで確信しました。もちろん私もです。スクールカースト上位の人を見て、自分とは違うな、感じていたような。そういう人たちの味方なのです。ほんとに。違かったら教えてください。
遠くへ行ったさっちゃんは
髪の毛を染めました
煙草などを覚えて
久しぶりって言いました
という歌詞が印象に残ります。いきなり人名が出てくることが多いandymoriです。これが実在する人物なのかそうでないのかは分かりませんが、なんとなく共感できませんか?変わった彼女と変われない自分。でも決して変わった人間に対して憧れを抱くことはありません。自分とは違かったんだな、と思うだけです。
8. オレンジトレイン(ファンファーレと熱狂収録)
公式によるものがなかったので動画はありません。
オレンジトレイン、夕焼けに輝く電車のことでしょうか。スローテンポな曲調から想像できるのは橙色の、地方の小さな駅。心象風景に近い原風景です。
曲の途中で歌とギターだけになる部分があるのですが、そこでのギターのサウンドが、コードをあえて動かさず高い位置で一定のリズムで弾いているため踏切を連想させるんですよね。意図的なものかは分かりませんが、恐るべき感性。
人身事故で君に会えない
乾いた空に響くアナウンス
サビのこのフレーズが好きです。オレンジトレイン。
7.ベンガルトラとウィスキー(アンディとロックとベンガルトラとウィスキー収録)
公式によるライブ映像が2つYouTubeにあったのですが、僕がandymoriにハマるきっかけとなった、武道館でのラストライブで1曲目に披露されたものを載せます。
この私的なランキングの中で唯一ポップな曲調ですね。かといって歌詞まで明るいわけでは決してありません。
安いウィスキーで全部
丸一日全部無駄にしてしまうようなそんな
life is party
life is showtime
なんてまた おどけた顔でいいたいわけじゃない
素敵すぎませんか?サビにこれでもかってくらい詰め込まれたこの歌詞、BPMが早いのでまるで生き急いでいるかのように聴こえますが、きっとただ自己を省みているだけです。
疾走感溢れる曲の中にある諦めに似た感情、二律背反であるようで見事に組み合わさり最高の曲に仕上がっています。誰もこの曲に文句をつけることができません。そういう曲だから。
6. トワイライトシティー(宇宙の果てはこの目の前に収録)
この曲も 動画がないので 載せません
わたし
andymoriのラストアルバムとなった「宇宙の果てはこの目の前に」の一曲目を飾る曲です。
掴みの一曲目、浮遊感あるコーラスから入り
トワイライト
ずっと何か思い出せそうな
そんな生き方だ
と歌います。歌い出しからいきなりなんとも言えない感情になります。
それにしてもandymoriは夕焼けとかトワイライトとか好きですね。聴く人に見事にその景色を思い起こさせるんだからもう脱帽です。
別に悲しくない
消えていくわけじゃない
流動するだけだ
という歌詞がとても刺さります。人やモノとの別れにも同じことが言えますね。それでも悲しくなってしまうのは人間の性なのでしょうか。
この曲を聴いて想像される色は、橙というよりは青みがかった紫ですね。そっちのトワイライトです。これから本当に暗くなる直前の、綺麗な空です。
後編へ続きます。
性愛賛歌 YUKI|うれしくって抱きあうよ
オーストラリアの著名な精神科医ジークムント・フロイトの残した名言に
「The great question that has never been answered, and which I have not yet been able to answer, despite my thirty years of research into the feminine soul, is 'what does a woman want?'」(30年に渡って女性心理を研究してきたのにもかかわらず、未だに理解できないのは「女性が何を求めているか」である)
というものがあります。女心と秋の空とは言い得て妙ですが、かの有名なフロイト先生でさえも答えが出せないのであれば、もうそれが答えなのでしょう。
フランスの哲学者ジョルジュ・バタイユは著書「エロティシズム」で、エロスはエネルギーであり、根源的に生と死に深く関わっていると説きました(読んだのだいぶ前なので違っていたらごめんなさい)。
性にまつわるアレコレはいつだって人間の側にいるはずなのに、我々は普段気づかないフリをして生活をしています。おおっぴらにすることなんてあまりありません。あまり大きく一括りにするのは好きではありませんが、欧米などと比べると日本人は特にそれが顕著なのではないでしょうか。
YUKIが2010年にリリースした「うれしくって抱きあうよ」は、性に対して前向きな、明るい思考が感じられる曲となっています。
信じられないくらいいい曲ですよね。ちょっと前にNONIOのCMでローラが歌ってました。
なんか捻った前振りで紹介したくてフロイトやらバタイユやら出しましたが、この曲はそういう、潜在的である〜とか人間は本質的に〜とか、その辺の堅苦しい言葉とは無縁のものです。YUKIがこんなに堂々と性を歌っているのですから、これにはフロイト先生もびっくりすることでしょう。
かといってただのエッチな歌でもありません。歌詞に現れる言葉の響きは甘美で耽美ですが、どんなものよりもまっすぐな気持ちが歌われているラブソングです。「うれしくって」抱きあっているのです。
「甘い匂いを撒き散らして 僕らはベッドに潜り込んだ」
「たなびくサイレン 愛撫のリフレイン 茹だるようなビート 少し震えているのかい?」
「くろすぐり色の玉手箱を 身の程知らずの指で開ける」
性行為を暗に匂わせていたり隠喩していたりする歌は、底抜けに明るくふざけた調子のものか、暗く寂しげで後ろ向きなものかのどちらかであることが多いかと思います。この曲の明るさと前向きなスタンスは、聴く人を巻き込んで一つになれる気にさせてしまいますね。要らない自信すら与えられそうでもはや恐ろしいとまで思ってしまいます。
YUKI自身、性に対して割と奔放というか、女性だからこうであれ、みたいな悪しき風習を全く気にせず好きに生きている感じの人ですよね。調べれば調べるほど面白いエピソードが出てきます。
うれしくって抱きあう、うれしくって抱きあうのです。皆さんは最後にうれしくって抱きあったのはいつですか?僕は内緒です。ただ一つ言えるのは、フロイト先生ですら分からないことが私に理解できるはずがないということです。
恋の機微 チャットモンチー|染まるよ
現在放送中の朝ドラ「エール」とても面白いですね。私はたとえ5時に寝たとしても8時に起きてリビングへ向かいこのドラマを視聴しています。15分後には再び自室のベッドに飛び込み眠りにつくのですが。
「エール」は、この1週間「東京恋物語」という副題が付けられており、ヴェルディの歌劇「椿姫」を歌いこなすため、音(二階堂ふみ)が恋の機微を学ぶことに主軸を置いたストーリー展開が行われていました。
恋の機微、こう聞くと難しいですが、確かに存在するものだと思います。
自分の気持ちを押し殺して相手の幸せを望んだり、好きな人へ感じてしまう劣情だったり、忘れられない人だったり……言葉にするのも野暮ないろいろ、あれこれ、あーだこーだ、blah blah…いや、野暮という以前に、言葉に表せないから機微なのです。
しかし、言葉だけでは言い表すことができなくても、音楽に乗せるとその情感を他者に伝えることが可能になります。
2018年7月に完結したバンド、チャットモンチーによるガールズバンド史に残る大名曲「染まるよ」です。
うーん、およそ3分半の曲を聴いただけで一本の映画を観たような気分になります。
明確に「振られた」とは言っていませんが、歌詞の端々から失恋ソングであることが分かります。これが「恋の機微」です。ある程度生きてきた人間なら、この機微がわかるのです。
あなたの好きな煙草
わたしより好きな煙草
素敵な歌詞ですね🚬しかしここで「この歌で歌われている相手はこういう人だったんだろう」という旨をここに書くことは、粋ではありません。具体的に書きすぎない歌詞には、想像を膨らませ、聴く人にその人だけの人物像を作り上げさせる力があります🚬
煙草に特に思い入れのない男である私でも、この歌は不思議と心に滲みてしまいます。歌には説得力がありますよね。
音楽的な話をすると、この曲にある圧倒的情緒の秘密はなんといってもサビのコード進行にあるといえます。
サビまではわりかし普通なのですが、サビで
B♭maj7→Am7→Dm7→Csus4
B♭maj7→Csus4→F→E6
と動きます。この7thコードの連続で一気に、所謂「エモさ」が出しているのですね。7thコードの響きは「エモい」ことで有名です。
あくまでコード進行であり、実際はカポ1フレットで演奏しておりこの通り弾いているわけではないのですが、やはり響きは7thの音が加わるだけで違って聴こえます。特にCsus4なんて最高ですよねー!最近はすごいガールズバンドがたくさん出てきていますが、sus4を使いこなせる人たちはあまりいないのではないでしょうか。
そしてなんといってもいきなり出てくるFの存在感!!!歌詞と合わせると「満たしたかった」の直後に現れるコードですね。なんともいえぬ高揚感で包まれます。この曲最大の魅力がこのFコードですね。7thの流れがあるため見事なエモーショナル・コードとなっています。
最後の転調のことを忘れてはいけません。
「でももう いらない」の部分で音階を上げていき、半ば強引に半音上げていきます。力技ですが、勢いと唐突さがあり聴いていて非常に気持ちいいです。センスが光っていますね。
しかし何度聴いてもいいですね。あーーー
皆さんも眠れない夜があったら、この曲を聴いて誰かしらを思い出してください。思い出す人がいない場合は私のことを思ってください。そのとき感じたなんとも言えない気持ちが、恋の機微です。間違いなく。
三日月サンセット カバー
お久しぶりです。私は元気です。緊急事態宣言は解除されましたが、まだ油断できない状況が続きますね。
このようなちんまりした、読者のほとんどいないブログは放置されてなんぼです。
私が中学生の頃、3年前の記事が最後となっておりそれ以降更新されていない、サカナクションが大好きな女性がライブや新譜の感想を述べるブログをよく読んでいました。きっと彼女は今でもどこかで生きているのだと思いますが、私がそれを知る由はありません。しかしブログは未だに残っており、確認されることもないであろうアクセス数のカウントを刻み続けているのです。
自分の知らないところで、自分の知らない人が、自分の知らない間に自分のブログを読んでいる、これとても素敵なことだと思うんです。放置されて忘れ去られたブログたちも、知らないところで誰かを笑顔にしていたり、見聞を広める手伝いをしていたりするのです。
何やら語ってしまいましたがあまり気にしないでください。
サカナクションの三日月サンセットをコピーしたときの映像をここに置いておきます。
早くこの辛い時期が終わり、気兼ねなく友人や恋人と遊べるようになって欲しいですね。恋人はいませんが。
※追記: ブログを読み返していたらデロリアンの記事で「ブログを放置したくはない、愛着が湧いている」という旨の発言をしていました。人は変わる生き物です。変わらないつもりでいたあたしだって変わるんですよね どうせ変わっていくものなら あなたと一緒に変わりたい
東京事変復活に寄せて
2020年、閏年であり東京オリンピックが開催されるこの年の1月1日に、東京事変の「再生」が発表されました。
なんかもう、何も言えません!今更東京事変に対する愛を語るのもなんか嫌だし!お前事変好きだったっけ?みたいな奴がSNSで騒いでて複雑な気持ちになったし!
ただひとつ言えるのは、0時より配信が開始された新曲「選ばれざる国民」を聴く前に「まあ椎名林檎も事変メンバーとよく一緒に演奏してたりするしな、浮雲と歌うこともあるし、正直新鮮味はなさそうだな」などと考えていたのですが、いざ聴いてみると、それはまさしく東京事変の音なのでした。聞き覚えのある音たちが、聴いたことのない曲を作り上げていました。これは紛れもなく東京事変の曲です。昔からずっと聴いていた彼らの曲が、真新しさを伴って2020年に再生されたのです。
今からMVを片っ端から見直してきます。また会いましょう。チケット当たるか?
そして皆さん、あけましておめでとうございます。ブログの更新は完全に不定期になっておりますが私は元気に生きていますので今年も何卒よろしくお願い致します。