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性愛賛歌 YUKI|うれしくって抱きあうよ

 オーストラリアの著名な精神科医ジークムント・フロイトの残した名言に

 

「The great question that has never been answered, and which I have not yet been able to answer, despite my thirty years of research into the feminine soul, is 'what does a woman want?'」(30年に渡って女性心理を研究してきたのにもかかわらず、未だに理解できないのは「女性が何を求めているか」である)

 

というものがあります。女心と秋の空とは言い得て妙ですが、かの有名なフロイト先生でさえも答えが出せないのであれば、もうそれが答えなのでしょう。

 

 フランスの哲学者ジョルジュ・バタイユは著書「エロティシズム」で、エロスはエネルギーであり、根源的に生と死に深く関わっていると説きました(読んだのだいぶ前なので違っていたらごめんなさい)。

 

 性にまつわるアレコレはいつだって人間の側にいるはずなのに、我々は普段気づかないフリをして生活をしています。おおっぴらにすることなんてあまりありません。あまり大きく一括りにするのは好きではありませんが、欧米などと比べると日本人は特にそれが顕著なのではないでしょうか。

 

 YUKIが2010年にリリースした「うれしくって抱きあうよ」は、性に対して前向きな、明るい思考が感じられる曲となっています。

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 信じられないくらいいい曲ですよね。ちょっと前にNONIOのCMでローラが歌ってました。

 

 なんか捻った前振りで紹介したくてフロイトやらバタイユやら出しましたが、この曲はそういう、潜在的である〜とか人間は本質的に〜とか、その辺の堅苦しい言葉とは無縁のものです。YUKIがこんなに堂々と性を歌っているのですから、これにはフロイト先生もびっくりすることでしょう。

 かといってただのエッチな歌でもありません。歌詞に現れる言葉の響きは甘美で耽美ですが、どんなものよりもまっすぐな気持ちが歌われているラブソングです。「うれしくって」抱きあっているのです。

 

「甘い匂いを撒き散らして 僕らはベッドに潜り込んだ」

「たなびくサイレン 愛撫のリフレイン 茹だるようなビート 少し震えているのかい?」

「くろすぐり色の玉手箱を 身の程知らずの指で開ける」

 

 性行為を暗に匂わせていたり隠喩していたりする歌は、底抜けに明るくふざけた調子のものか、暗く寂しげで後ろ向きなものかのどちらかであることが多いかと思います。この曲の明るさと前向きなスタンスは、聴く人を巻き込んで一つになれる気にさせてしまいますね。要らない自信すら与えられそうでもはや恐ろしいとまで思ってしまいます。

 

 YUKI自身、性に対して割と奔放というか、女性だからこうであれ、みたいな悪しき風習を全く気にせず好きに生きている感じの人ですよね。調べれば調べるほど面白いエピソードが出てきます。

 

 うれしくって抱きあう、うれしくって抱きあうのです。皆さんは最後にうれしくって抱きあったのはいつですか?僕は内緒です。ただ一つ言えるのは、フロイト先生ですら分からないことが私に理解できるはずがないということです。