恋の機微 チャットモンチー|染まるよ
現在放送中の朝ドラ「エール」とても面白いですね。私はたとえ5時に寝たとしても8時に起きてリビングへ向かいこのドラマを視聴しています。15分後には再び自室のベッドに飛び込み眠りにつくのですが。
「エール」は、この1週間「東京恋物語」という副題が付けられており、ヴェルディの歌劇「椿姫」を歌いこなすため、音(二階堂ふみ)が恋の機微を学ぶことに主軸を置いたストーリー展開が行われていました。
恋の機微、こう聞くと難しいですが、確かに存在するものだと思います。
自分の気持ちを押し殺して相手の幸せを望んだり、好きな人へ感じてしまう劣情だったり、忘れられない人だったり……言葉にするのも野暮ないろいろ、あれこれ、あーだこーだ、blah blah…いや、野暮という以前に、言葉に表せないから機微なのです。
しかし、言葉だけでは言い表すことができなくても、音楽に乗せるとその情感を他者に伝えることが可能になります。
2018年7月に完結したバンド、チャットモンチーによるガールズバンド史に残る大名曲「染まるよ」です。
うーん、およそ3分半の曲を聴いただけで一本の映画を観たような気分になります。
明確に「振られた」とは言っていませんが、歌詞の端々から失恋ソングであることが分かります。これが「恋の機微」です。ある程度生きてきた人間なら、この機微がわかるのです。
あなたの好きな煙草
わたしより好きな煙草
素敵な歌詞ですね🚬しかしここで「この歌で歌われている相手はこういう人だったんだろう」という旨をここに書くことは、粋ではありません。具体的に書きすぎない歌詞には、想像を膨らませ、聴く人にその人だけの人物像を作り上げさせる力があります🚬
煙草に特に思い入れのない男である私でも、この歌は不思議と心に滲みてしまいます。歌には説得力がありますよね。
音楽的な話をすると、この曲にある圧倒的情緒の秘密はなんといってもサビのコード進行にあるといえます。
サビまではわりかし普通なのですが、サビで
B♭maj7→Am7→Dm7→Csus4
B♭maj7→Csus4→F→E6
と動きます。この7thコードの連続で一気に、所謂「エモさ」が出しているのですね。7thコードの響きは「エモい」ことで有名です。
あくまでコード進行であり、実際はカポ1フレットで演奏しておりこの通り弾いているわけではないのですが、やはり響きは7thの音が加わるだけで違って聴こえます。特にCsus4なんて最高ですよねー!最近はすごいガールズバンドがたくさん出てきていますが、sus4を使いこなせる人たちはあまりいないのではないでしょうか。
そしてなんといってもいきなり出てくるFの存在感!!!歌詞と合わせると「満たしたかった」の直後に現れるコードですね。なんともいえぬ高揚感で包まれます。この曲最大の魅力がこのFコードですね。7thの流れがあるため見事なエモーショナル・コードとなっています。
最後の転調のことを忘れてはいけません。
「でももう いらない」の部分で音階を上げていき、半ば強引に半音上げていきます。力技ですが、勢いと唐突さがあり聴いていて非常に気持ちいいです。センスが光っていますね。
しかし何度聴いてもいいですね。あーーー
皆さんも眠れない夜があったら、この曲を聴いて誰かしらを思い出してください。思い出す人がいない場合は私のことを思ってください。そのとき感じたなんとも言えない気持ちが、恋の機微です。間違いなく。