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ファンファーレと熱狂、赤い太陽 andymori|1984

 「〇〇知らないとか人生の半分損してるよ」という言葉が本当に嫌いで、言われるたびにはらわたが煮えくりかえります。私の人生の価値を勝手に決めないでいただきたい。せめて1/45とかじゃない?

 話は変わりますが、今この記事を読んでいる人の中でandymoriを聴かない人はいますか?もしいるならば、あなたは人生の半分損しています。

 

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 2010年にリリースされたandymoriの2ndアルバム「ファンファーレと熱狂」に収録されている「1984」という曲です。

 私がandymoriを聴くようになったのは大学生になってからなのですが、この曲を聴くと自分がまだまだ子どもだった、まさに2010年くらいのことを思い出します。「1984」というタイトルは小山田壮平の生まれた年からきており、彼の昔の思い出がまるで自分のことのように心に響き渡るのです。 

 短いベースのフレーズから始まり、ドラムもちょこっとだけ叩いたあと、アコースティックギターの音色とともに3人の演奏がスタートします。途中でトランペットとエレキギターが入りイントロを盛り上げます。

 

 5限が終わるのを待ってた わけもわからないまま

 椅子取りゲームへの手続きはまるで永遠のようなんだ

 真っ赤に染まっていく公園で自転車を追いかけた

 誰もが兄弟のように他人のように 先を急いだんだ それは

 

 歌い出しです。「5限」「真っ赤に染まっていく公園」という言葉から夕方くらいの時間帯が連想されます。実際、ライブでこの楽曲が披露されるときはオレンジ色の照明が使われることが多いのです。

 まさに1984の色。いい仕事してます。

 「5限が終わるのを待ってた」の「待ってた」を食い気味に歌うところにセンスを感じます。気だるさというか、適当さというか、ちょっと外した感じが曲の雰囲気にマッチしているのです。ここを普通に歌う小山田壮平ではありません。

 「椅子取りゲームへの手続き」は恐らく就職活動のことを表しているのだと思います。周りと同じようにありきたりに就職、そこから先は未知だけど果てしない、みたいな。この辺の歌詞から漂うディストピア感はジョージ・オーウェルの名著「1984年」をどこか彷彿とさせます。

 

 ファンファーレと熱狂 赤い太陽 5時のサイレン 6時の一番星

 

 サビの歌詞です。アルバムのタイトルがここで出てくるところにグッときます。

 サビは裏声で綺麗に歌われています。演奏もトランペットがボーカルと同じフレーズをなぞるだけで他は大きな変化がなく、Aメロから流れるようにスッと始まりフワッと終わり、Bメロに繋がります。

 

 1984 花に囲まれて生まれた 疑うことばかり覚えたのは戦争の見過ぎか

 親たちが追いかけた白人たちがロックスターを追いかけた

 か弱い僕もきっとその後に続いたんだ

 

 ここまで間奏は無く、Bメロ後にイントロと同じフレーズが入ります。

間奏後再びBメロ、そのままシームレスにサビになるのですが、2回目のサビはドラムとボーカルだけになります。静かになることで歌詞が強調されるのに加え、裏声の繊細さがより際立ちます。

 再び楽器隊が入り、間奏になります。ここの間奏の途中でキーが2つ下がり、そのまま力強くサビを歌い上げます。

 ここがこの曲の一番好きなポイントです。キーをあげるのではなく、下げて地声で歌う。ラストに向けて壮大に、パワフルに熱唱。最高です。

 歌詞の話から急に曲の話になってしまいましたが、この曲は作曲の面でも非常に優れた楽曲なのです。シンプルでありながらそれを感じさせない表現力があります。

 この曲は基本的に4つのコードしか使われていません。転調でGからEにキーが変わるくらいで、それ以外はひたすら4コードを繰り返しています。それなのに色々な表情を感じ取ることができるのです。

 曲の構成は

イントロ→Aメロ→サビ→Bメロ→間奏→Bメロ→サビ(静か)→間奏(転調)→サビ

となっており、それぞれが全て異なる色を持っていて(同じサビでも演奏がドラムだけだったり転調してたり)展開が多いため、同じコードでも変化があるように感じさせるのだと思います。

 シンプルなコード進行でこのような曲を作るのはとても難しいことです。やはり小山田壮平、天才です。

  「ファンファーレと熱狂」はこの曲から始まります。次に続く楽曲たちも全てが名曲です。つまり名盤ってことですね。「1984」から溢れ出る哀愁、郷愁、不安の感情は聴く人全ての心に突き刺さり、全員を同じ気持ちにしているのでしょう。聴けば分かります。

 

 解散前にandymoriを聴かなかったことが本当に悔やまれます。しかし今こうして存在に気づけていろんな感情を持って聴けているので、人生の半分は損していないはずです。

 

 話は若干変わりますが、昨日まで所属している軽音サークルの合宿があり、楽しそうにライブしている4年生の姿を見て、大好きな彼らが卒業していなくなることを考えてしまって帰りのバスで誰にもバレないようにシクシク泣いていました。そのときに私のイヤホンから流れていたのがこの「1984」だったのです。

 彼らの卒業ライブでベース、ドラムの4年生と3人でandymoriをやる予定です。この曲やりたいなあ。絶対泣いちゃうんだろうなあ。