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ファンクラブ月額会員歴8年の現役大学生が主観で選ぶサカナクション名曲ベスト10 後編

 こんばんは。大学のテストが終わり、まだレポートなどがチラホラ残っているのですが春休みに入りました。大学の春休みはおそらく人生で一番楽で幸せな期間です。何回もあるものではないので、大切にしていきたいと思います。

 

 以前書いた記事の続きです。

 6位まで書きました。ベスト5の発表となります。緊張しますね。

 

 

 

5位…映画

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 2013年に発売された6thアルバム「sakanaction」からのランクインです。「映画」という奇妙な曲名がたまりません。「サカナクションの映画」なんて言ったら、知らない人はサカナクションが映画化したのだと勘違いしてしまうでしょう。

 タイトルが漢字2文字の曲は、他に「開花」「雑踏」「流線」「陽炎」があります。映画の主題歌(曲名じゃない!)だった「陽炎」以外の「映画」(曲名!)を含む4曲はどれもマイナーな曲ですが、元気過ぎないので深夜に聴くと最高です。全て好きな曲なのですが、とくに「映画」はずば抜けて私のツボに入ったので5位にランクインしました。ちなみにファン投票ではランク外でした。

 曲は生活音から始まります。サカナクション、よくやりますよね。「雑踏」でも日常の音が使用されていましたし、それ以外の曲でもたくさん使用されています。バンドでのコピーが難しくなるのは勘弁なのですが、楽曲の中に日常の音があるという違和感が、慣れると自然に、一つの楽器のように捉えて聴けるようになる、あの感じが好きです。

 当たり前なのですが、生活音といってもそれは録音されたものなので、いくら聴いても同じ音が流れるんですよね。聴けば聴くほど耳に馴染んで溶け込んでいくのはそういう点もあるからなのかなと思います。

 部屋で録音されたのでしょう、紙をめくる音や食器をカチャカチャやっている音、キーボードを打つ音が聞こえてきます。話し声も聞こえます。

「あー、シャーペン(?)貸して」

「会社行って……もちろん」

 などと言っていますね。なんの話でしょうか。

 生活音が聞こえなくなりキーボードと打ち込みのドラムが入っても、サンプリングされた食器をカチャカチャやっているらしき音は鳴り続けます。

 「探してる音 多過ぎて 多過ぎて この部屋で何を忘れたか 忘れたさ」

 という歌詞から楽曲制作に尽力し苦労していたことが伺えますね。「sakanaction」は山口一郎邸にて宅録で作られたアルバムなので「この部屋」というのは山口一郎の家の部屋のことでしょう。

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 多分この部屋です。山口一郎宅のリビングですね。「ミュージック」の頃のアーティスト写真です。

 この「ミュージック」のカップリングとして「映画(コンテ 2012/11/16 17:24)」という曲が収録されています。「映画」のデモ音源のような曲で、生活音が使われている点やシンセの音や歌詞など、同じ部分がいくつも見受けられます。

 しかし、「映画(コンテ〜」には、いわゆるサビのような部分はなく、尻切れに終わってしまうのです。「変な曲だな」と当時思っていたのですが、翌年リリースされたアルバムに収録されていた「映画」(今回ランクインした方)にその続きの部分が存在していてました。

 曲が進むと今度は色々な場所で録音された音が洪水のように左右から聞こえてきます。そのままその音たちが一つの場所に収束するかのようにまとまって行き、カップリング版の「映画」には無かったサビ部分へと展開していくのです。

「上行く日々は 上行く日々は 目隠しされた渡り鳥だ」

「上行く日々は 上行く日々は 鱗みたいな光だから」

 何度も繰り返し歌われます。決して音数が多いわけでは無いのですが、それまでの静かさに比べてシンバルやベースの音が加わり音が大きくなること、ハモりが加わって歌詞に広がりが出ることでかなり壮大な印象を受けます。

 「上行く」の部分は「wake」にしか聞こえないため、歌詞カードを見るまでは英語だと思い込んでいました。

 サビをしばらく繰り返したあと、ドラムだけになりそのまま曲が終わります。

 2番がないのに5分という長さであったり、そのうちサビが1分以上であるというかなり実験的な曲ですが、アルバム「sakanaction」ではこの曲がそれまでの明るいアップテンポな曲の流れから一転させるターニングポイントとしての機能を果たしており、非常に重要な役目を担っています。

 噛めば噛むほどおいしくなるスルメのような曲です。聴くたびに新しい発見があります。もう発見できないくらいには聴きましたが。

 

4位…三日月サンセット

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 デビューアルバム「GO TO THE FUTURE」の1曲目かつリードトラック、要するにデビュー曲です。最初期の曲ですが現在も根強い人気があり、ファン投票のランキングでも同じく4位にランクインしていました。ライブでもほぼ必ず演奏され、最近はイントロが長いアレンジバージョンをやるようになりました。

 最初期のサカナクションの曲は今と比べて音色が少なく、バンドアンサンブルとしてミニマムにまとまっているため、聴きやすくて落ち着きます。特にシンセ、今では物凄い音を出していますが、初期の頃はピアノやエレピが中心のシンプルな音色でした。コピーしやすくて良いと思います。

 「三日月サンセット」なんてボーカロイドの曲のタイトルみたいですが、この頃からガッツリサカナクションです。

 ディレイのかかったシンセサイザーの音から始まるのですが、この左右に振られたフレーズ、シンプルなのにも関わらず非常に耳に残ります。アルバムの1曲目は掴みの大事な部分ですので、その点で大成功といえるでしょう。

 左右に音を振り分けるといえば、山口一郎が以前ラジオで「片耳イヤホン防止委員会」的な企画を行なっていた際に、イヤホンの右、左それぞれのみから聞こえる音の違いの例として「三日月サンセット」のイントロを使用していました。この部分はキッチリ左右に分かれているので、片耳だけで聴くと違和感が強いのです。山口一郎はそのような説明をしながら、カップルの片耳イヤホンに異を唱えていましたが、最終的には「モノラルのイヤホンならいい」という結果に落ち着いたような気がします。

 シンセはそのままに他の楽器が入ってきます。拍を意識したベースのフレーズからは当時から光る草刈姐さんのセンスが伺えます。ギターは非常にシンプルな単音の歯切れの良い音を繰り返します。

「僕はシャツの袖で流した涙を拭いたんだ」

 頭の歌詞です。初期のサカナクションにはこのような細かい動作を描写する傾向が多く見られました。良く「文学的」と言われる歌詞観ですが、特に初期のサカナクションに当てはまる言葉だと私は思います。この頃の方が「君」という言葉がより身近に感じられますよね。

 サビに入るとギターは強めのディレイをかけ、フレーズを繰り返しながら右へ左へと音が回っていきます。シンセ感の強い音で、パッと聴いただけだとギターの音だと気付くのはなかなか難しいです。逆にシンセはシンプルなフレーズを弾いています。

 この頃のサカナクションは「長すぎず短すぎない絶妙なタイミング」を強く意識していたらしく、サビも8小節で終わり、その後の間奏も8小節で終わります。バランスを考えた構成だと思われますね。

 一方曲の構成はシンプルで、

Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Aメロ→Bメロ→サビ

となっています。サカナクションが大サビを多用するようになったのは「夜の踊り子」以降からでしょうか?サビの後にさらに大きな展開がある曲は「ホーリーダンス」が最初だったと記憶しています。

 散々述べた通り、シンプルでアッサリとした曲なのですが、曲全体に見られる心地良いグルーヴ感や写実的な歌詞、印象に残るメロディからサカナクション屈指の名曲の一つとなっています。

 MVです。低予算な感じが伝わってきますね。山口一郎が常にカメラ目線なのがじわじわときます。

 スーパーボールが使用されていますが、合成ではなく実際に演奏しているところにスタッフが投げている部分もあるらしく、キーボードの岡崎英美は顔にぶつけられ負傷したらしいです。

 

ここからはベスト3です。

 

 

 

3位…Ame(A)

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 恐らく今回のランキングで一番マイナーな曲です。しかしファン投票では16位にランクインしています。恐るべしファンクラブ会員。

 1stシングル「セントレイ」のカップリング曲で、かつ3rdアルバム「シンシロ」の1曲目である「Ame(B)」の兄貴のような曲でもあります。

 サカナクション至上一番マイナーな曲は、同じくセントレイ収録の「もどかしい日々」であると勝手に決めつけていたのですが、カップリングベストである「月の波形」がリリースされたことで報われたようです。この曲の知名度もそこで上がったのかなと。

 サカナクションは「シンシロ」以降実験的な要素を楽曲に多く取り入れて変化して行きます。シンシロ前にリリースされたシングルのカップリングである「Ame(A)」は、初期のミニマムでまとまった形の面影を強く残しながらも、バンドアンサンブルの枠を超えた音数など、現在のサカナクションの片鱗を見せている曲です。

「雨は気まぐれ つまり心も同じ」

 イントロはなく、いきなり歌から入ります。ほんとに雨好きですね初期。「雨は気まぐれ」という曲もあります。まんまです。

「きっと僕が何も言えないのはこの雨のせいで 雲が晴れる前に言い訳しておくんだ」

「ぼんやりしたくて火を付けた煙草が目に沁みたのは 他に何か深い意味がある訳じゃないんだ」

 サビの歌詞です。歌詞はサカナクション節全開ですが、メロディが独特で耳に残ります。

「この雨のせいで」の部分、「せっ」と溜めて「い」のところで次の小節に入ります。このような手法は他のアーティストの曲にも見られますが、実際に自分で作曲をしてみると、意識しないと使えないテクニックであることが分かります。

サビは左右に分かれたギターの音が小気味よいのですが、女性のコーラスの音が少し不気味でどこかスリリングな要素を感じさせてくれます。安心できないような感じがして、ハラハラしている間に終わってしまうサビです。本当にアレンジが上手いですね。

 そしてサビが終わると間髪入れずに再びAメロに戻り、ワンフレーズだけ歌うとキーボードソロに入ります。ここがこの曲のミソです。繰り返すと見せかけて、フェイントを入れてきます。そうすることで直前の歌のインパクトが強くなります。歌詞はというと

「忘れかけてた 靴を引きずり出した」

いや靴かよ!でも大好きです。

 あと割とベースが暴れているんですよね。そこでハイフレット行く!?みたいな感じで。曲全体の良いアクセントになっています。サビではうねる様な唸る様な音を聞かせてくれます。サイコー!

 

2位…ドキュメント

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 再び5thアルバム「DocumentaLy」からです。ファン投票では21位でした。

 以前書いた記事です。私のこの曲に対する並々ならぬ思いが書き散らかされているので、ぜひご覧ください。

 「DocumentaLy」は当時中学生だった私がサカナクションにハマるきっかけとなったアルバムであり、当時耳にタコができるほど聴いていた(当時は本当にサカナクション以外聴いていなかった)ので、全ての曲に深い思い出があります。その中でもこの「ドキュメント」は特別で、聴くだけで様々な記憶が蘇る私の回顧アンセムなのです。

 塾で「キーボードソロやべえな」と思いながら聴いたり、母の実家でiPodでラブソングなのかどうか考察しながら聴いたり、家のコンポで爆音で流して親に怒られたりしていました。全て蘇ります。

 関係ないですが、私はサカナクションが好きなあまり音源を形に残るもので欲しくなってしまい、iTunesで全て購入しているにも関わらず全てのCDを購入しiPodに入れ直したという過去を持っています。当時の少ないお小遣いで、算段を立てながら購入しました。

 この曲の記事を書いたあと、サークルでサカナクションのコピーをしてライブに出ました。それ自体は会心の出来だったのですが、再現の難しさに定評があるサカナクションのコピバンってよく事故るんですよね。音がたりなかったり、全然違かったりで。それを避けるため、なるべくバンドで再現できる曲を選んだところ、この曲をやることになりました。音数の少なさや音作りの面で考えると、最も再現しやすい曲だと思います。ちなみに他に「三日月サンセット」「モノクロトウキョー」「表参道26時」をやりました。ほとんど私が選びました。

 自分語りになってしまいましたが、この曲自体についての話はドキュメントの記事にたくさん書いてあるので省きます。本当に好きな曲です。

 MVです。女性が可愛いです。

 

 さて、ここまで前編も合わせて1万字以上書いてきましたが、いよいよ第1位の発表です。なんでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1位…mellow

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 「映画」に続き6thアルバム「sakanaction」からのランクインです。ファン投票のランキングでは32位でしたが、もっと低いと思っていたので驚きでした。会員やっぱ分かってるな。

 とにかく良いとしか言えません。音が良いです。リズムが良いです。メロディが良いです。歌詞が良いです。シンプルにまとまりながらもグルーヴが強く出ています。

「絵になるような夜 絵になるような君」

「手の鳴る方へ行く 手繋がったまま君は踊る」

 踊る歌ですね。夜に女性とクラブにイメージです。ちなみにここでのクラブはパリピ用のクラブではなく、お洒落な空間でワケあり紳士淑女がしっとりとした音楽に身を委ね踊るタイプのクラブです。イメージですが。

 非常に物悲しげな曲ですが、サビでは壮大な、裏のリズムがが意識されたシンセの音が現れ、ゆったりとしたダンスミュージックの様相が見えてきます。

「クラップ鳴って踊る 土曜のダンスホールはまるでスローモーションだった まるで君は夜の海月」

 最高の歌詞ですね。捻り過ぎず、ストレート過ぎない。「土曜のダンスホール」という限定された空間が出てくることで、想像の余地を大いに与えています。憧れの異性や同性が踊っている様子を想像することができますね。

 踊っている様子を海月に例えるのは釣り好きな山口一郎ならではの表現なのではないでしょうか。海月って海を漂う姿が神秘的なので様々な例えに使われますが、踊る様子をくらげみたい、と例えるのはなかなかないと思います。やるう!

 サビが終わるとそのまま元のフレーズに戻り、余韻たっぷりで曲が終わります。アルバムで通して聴いていると、この余韻を残したまま明るめな「ストラクチャー」で最終盤に差し掛かります。

 この曲が1位になったのは、思い出補正や個人的好みが押し上げたからというのもありますが、それらを差し引いても文句なしの傑作だと思います。深夜に聴くとたまりません。エモーショナルという言葉がぴったりの曲です。

 

 というわけでベスト10全ての発表が終わりました。いかがでしたでしょうか。不満や異論は受け付けます。

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 作成したランキングをインスタグラムに載せたら友人からこのような苦情が寄せられましたが、うまいこと回避しました。涙ディライトは11位です。